殺すように、愛して。
 大丈夫だよ、ありがとう。でも……。これ以上迷惑はかけられない。別に迷惑じゃない。気持ちは本当にありがたいけど、甘えるのは嫌だから。……何か抱え込んでるなら、話すことで少しは楽になるかもしれないじゃん。そうかもしれないけど、俺は大丈夫だよ。普段喋らない奴がたくさん喋ったから、だから、何か抱えて、溜め込んでるんじゃないかって思ったんだよね……? いや、まあ、それもあるけど、違う。……違うの? ……。……。……鳴海、さ、黛に……、DVされてるんじゃない? ……え、な。……襲いそうになって、触っちゃった時、制服の下、包帯……、巻かれてた、から、それで、日常的に、暴力、振るわれてるんじゃないか、と、思って……。や、あ、それは、あの……。話聞くだけでもって、思ったんだけど、ごめん、デリケートな問題だし、深入り、しすぎたな。……。親しい間柄でもないのに。……あ、の、その、包帯、は。……あ、やば。……鳴海。まさか、隠れて、話、聞いてた、とか……。だったら、洒落になんねぇよ……。別に、黛、が、原因、じゃな 瀬那、まだ帰ってなかったんだね。

 途切れる語尾。響く声。沈む空気。包帯のことを指摘され、分かりやすく動揺してしまう俺の背後で、その声は、割って入るように俺の言葉を引き裂いた。あ、と振り返るよりも先に、肩に手を回すように首を触られる。急所に刃物を突きつけられてしまったかのように、身動きが取れなくなった。自分の呼吸がやたらと近くなって、体の内側から胸を重く叩かれる。
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