殺すように、愛して。
 匂いも何もない、文字だけを頼りに、文字なのに興奮し、俺はその文字を書いた黛をおかずにして。無我夢中で刺激を与え続けた。抑えられない性欲に理性が飛び、熱すぎる体に息が乱れ、あっという間に訪れる頂に腰が揺れる。ガクガクと痙攣し、何も嵌まってない中が収斂するのが分かった。前屈みでビクビクと達って、口から垂れた粘り気のある液と吐き出した欲が、無意識のうちに力んで皺をつけてしまったルーズリーフや微かに冷えているフローリングを汚す。それでも、快楽に溶ける脳にかかった靄は晴れなかった。

「は……、あ……」

 吐息の熱が冷めない。気持ちよくなったはずなのに、気持ちよさがまだ足りない。まだ欲しい。黛、黛、黛。黛が、アルファが、欲しい。黛、黛、黛が。欲しい。黛、どこ。どこにいるの。学校にいるの。授業受けてるの。そんなのどうでもいいから、俺に触って。来て。黛。黛じゃないと、ダメだ。俺は。黛じゃないと。満足できない。黛。黛。黛が、俺を、こうしたんだよ。歪ませたんだよ。だから、だから。責任とって、めちゃくちゃにして。首を絞めて、めちゃくちゃにして。俺の、アルファ。俺の、黛。昂るだけの、ヒートを、殺して。黛。助けて。たすけて。

 達ったはずなのに、達った後の脱力感も虚無感もなくて。気持ちよくなればなるほど、触れば触るほど、逆に肉欲が膨れ上がっていくようだった。ぬらぬらと濡れた手はいつまでも止まらず、止められず、際限のない快楽を与え続けている。あ、あ、と小さく喘ぎながら、視線の先にあるルーズリーフに埋められた黛の直筆、ひらがなや漢字、数字、記号などを脳で飲み込んで、脳で食べて、脳に自ら麻薬を送って、あ、は、まゆ、まゆ、ずみ、と情けなく涎を垂らして自慰に耽る俺は善がり狂っていた。
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