殺すように、愛して。
舐めれば舐めるほど溢れ出る唾液を飲み込めずに垂れ流し、汚らしく滑る俺の唇は、まゆずみ、とひらがなで喋るように動いていた。舐めても舐めても、黛は来ないし、達っても達っても、一回目よりも酷い発情は治まらない。どうすればいいのか分からず、欲求をちゃんと消化できる捌け口も見つからず、何も分からなくて何も見つからないことに完全に気が狂ってしまったかのように、俺はルーズリーフに、涎を纏わりつかせた舌を這わせることをやめなかった。やめられなかった。その合間に、まゆずみ、まゆずみ、とぽつぽつと呪文を唱え続ける。舐めて、舐めて。まゆずみ。舐めて、舐めて、また、舐めて。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。
発情による興奮で汗だくになりながら、紙を舌で湿らせ、その濡れた舌で、まゆずみ、まゆずみ、と何度も何度も口にする。細い声だった。消え入りそうな声だった。まゆずみ、まゆずみ、まゆずみ。紙を舐める。舐める。まゆずみ。まゆずみ。何がしたいのか、何をしているのか、俺は頭がこんがらがっていて。ただ。ひたすら。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。そればかり。彼ばかり。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆず、み
「……あ」
不意に階下から、網戸にしていた玄関の開閉音が聞こえた。声が止まる。息が漏れる。耳を澄ます。音が近づく。課外授業を終えた由良が帰ってきたのだろうか。でも、なんとなく、どこか、違う。足音が、違う。違和感。振動して伝わる空気感が、彼のものではなかった。無論、父親でも母親でもない。足音は、家族以外の誰かだ。その誰かが、勝手に家に上がってきているのだ。それは、誰なのか。誰、誰なのか。誰、なのか。オメガのフェロモンを嗅ぎつけて、許可なく家に足を踏み入れてしまうほど煽られた見ず知らずのアルファだろうか。だとしたら、逃げ場がない。逃げられない。嫌だ。嫌だ。それは、嫌だ。来ないで。やめて。自室は閉め切っているのに匂いが外まで漏れているなんて思いたくない。まゆずみ以外に触られたくない。俺はまゆずみ以外に、触られたくない。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ、だったら、いいのに。まゆずみ。
発情による興奮で汗だくになりながら、紙を舌で湿らせ、その濡れた舌で、まゆずみ、まゆずみ、と何度も何度も口にする。細い声だった。消え入りそうな声だった。まゆずみ、まゆずみ、まゆずみ。紙を舐める。舐める。まゆずみ。まゆずみ。何がしたいのか、何をしているのか、俺は頭がこんがらがっていて。ただ。ひたすら。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。そればかり。彼ばかり。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆず、み
「……あ」
不意に階下から、網戸にしていた玄関の開閉音が聞こえた。声が止まる。息が漏れる。耳を澄ます。音が近づく。課外授業を終えた由良が帰ってきたのだろうか。でも、なんとなく、どこか、違う。足音が、違う。違和感。振動して伝わる空気感が、彼のものではなかった。無論、父親でも母親でもない。足音は、家族以外の誰かだ。その誰かが、勝手に家に上がってきているのだ。それは、誰なのか。誰、誰なのか。誰、なのか。オメガのフェロモンを嗅ぎつけて、許可なく家に足を踏み入れてしまうほど煽られた見ず知らずのアルファだろうか。だとしたら、逃げ場がない。逃げられない。嫌だ。嫌だ。それは、嫌だ。来ないで。やめて。自室は閉め切っているのに匂いが外まで漏れているなんて思いたくない。まゆずみ以外に触られたくない。俺はまゆずみ以外に、触られたくない。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ、だったら、いいのに。まゆずみ。