殺すように、愛して。
 暴走する欲望に拍車がかかってしまったかのように、俺は唇に触る黛の指を自ら出した舌先でぺろりと舐めていた。言葉で責めてきた先程とは打って変わって、様子を窺うように、観察するように、俺を見つめる黛の眼差しに頭がくらくらする。ぐらぐらする。文字を舐めるのでは到底感じられなかった黛を、今は直で感じているのだ。それに酷く興奮し、は、は、と獣のような息を吐いて自発的に発情を煽ってしまう俺は、指を舐められても平然としている黛の手を、縋るように、甘えるように、頼りない両手で掴み、彼の骨張った長い指を唾液でベタベタにしながらしゃぶって貪った。くちゅくちゅ、くちくち、と卑猥な水音が自分の口の中から聞こえ、それが更に思考を蕩けさせる。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみは、何も言わない。黙ったまま瞳孔を開いて、俺を、ずっと、じっと、見ている。はしたない姿や行動を見られているのに、なぜか、その視線に、興奮、する。高揚、する。俺は、俺は、発情で、馬鹿になっている、だけだ。

 黛に見られながら黛の指を舐め続けている内に、みるみる欲が膨れ上がり、たまらず片手を伸ばしてしまった俺は、頭をもたげているそれに触っていた。黛の目の前で、黛の指を咥えたまま、小さく喘いで、啼いて、善がる。気持ちよくて仕方がなかった。気持ちよくて手が止まらなかった。黛の指を舐めて興奮を煽り、黛に見られていることで更に盛り上がり、快楽にまっしぐらに堕ちていく。気持ちいい気持ちいい気持ちいい。一人きりでするよりも、ずっと、気持ちいい。気持ちいい。まゆずみ。きもちい。
< 179 / 301 >

この作品をシェア

pagetop