殺すように、愛して。
 瀬那がもっと馬鹿になっても、もっと淫乱になっても、それは全部瀬那のせいだから。快楽に溺れてる瀬那も、可愛いね。まゆずみ、まゆずみ、と脳内を彼で埋め尽くし、視界を淡いピンク色に染める俺の期待に応えるように言葉を落とした黛の手が、頬からするりと下へ降りていく。家でも常に身につけるようになった首輪を触り、包帯を隠す部屋着の上を滑り、治まらない肉欲に触れて。彼は。気持ちいいね、瀬那、と指を咥えさせたまま囁き、掬われたのにまた垂れ流している俺の涎を再度舐め取った。口腔を、皮膚を、欲望を、同時に責められ、狂気にあてがわれる体が歓喜に震える。

 他人の手で触られると、自分で触るよりも何倍も、何十倍も強い快感が走り、脅かされ、気を失いそうになってしまう。あ、あ、とぶっ飛んでいる理性によりどこを見ているのか分からなくなりながら喘ぎ、黛の服を、少しも乱れていない彼の服を、両手で握って縋りついた。気持ちよすぎて。気持ちよすぎて怖くて。壊れてしまいそうで怖くて。それなのに、黛に壊されかけているのに、黛に助けを乞うことしかできない俺は、涎を舐められ飲み込まれながら、舌を弄るように蠢き始めた指に犯されながら、もう何度目かも分からない頂を極めた。中が、蠢動する。強烈な快楽に視界が爆ぜ、気絶しそうになる。でも、瀬那、可愛いね、と恍惚とした様子で煽るように呟いた黛に、今回は気絶することを許さないとでも言わんばかりに、指を深く入れられた状態で、口内に舌を無理やり捩じ込まれてしまった。交わる唾液からアルファを、黛を感じ、指や舌の熱さに犯され蕩けていく。上も下も黛の好きなように愛でられて、目の焦点が合わなくなりそうなほどおかしくなるのに、全く抗えない多幸感に頭の天辺から爪の先まで覆い尽くされ、アルファを欲するオメガの本能に俺はずぶずぶと沈んでいった。ギリギリのところで気絶を堰き止められていることすら、故障しかけている俺の興奮を煽る要因になっているかのようで。イカれていた。俺の頭はイカれていた。黛のキスは気持ちよすぎる。
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