殺すように、愛して。
弟。弟。雪野の弟も、そこに通っている。俺と同じ高校に、通っている。話にならない。話が通じない。頭の片隅に浮かんでいる人物と、雪野の名字は同じ。まさか。もしかして。本当に。雪野は黛の兄なのか。黛には兄がいて、その兄が、雪野なのか。俺は、黛の兄と、番になってしまったのか。黛ではなくて、黛と血縁関係のある兄と。黛の兄が、俺の運命の番。黛ではなくて。黛。黛。黛。黛は。雪野の弟。運命に導かれ、惹かれ合い、見つめ合った時、雪野の瞳孔の開いた目が黛に似ていると思った俺のあの感覚は、間違いではなかったのか。勘違いではなかったのか。
勝手に口が開く。勝手に口が動く。勝手に息を吸って、吐いて。勝手に声が出た。でもそれは、俺の意志だった。勝手な意志だった。取り消さない。誤魔化さない。俺の意志だ。弟、を、気にした、俺の意志。
「あの、弟の、名前って……」
『そこ気になるんだ』
おかしそうに嗤われるものの、俺は至って真剣だった。恐ろしくて、真剣だった。ほぼ確定の事実を確認するために、真剣だった。寧ろそのことしか頭に入ってきていない。俺の名前を知った経緯も、俺の存在を知った経緯も、輪姦されたことを思い出す種になるのなら、それ以上深掘りしたくなかった。雪野は俺を知っていた。名前も高校も知っていた。知って、運命だと確信したから、探した。オメガである自分を知られ、あの手この手で探し出したその過程なんか、もうどうでもいい。どうだっていい。反論したって何かが覆るわけでもあるまい。俺が今知りたいのは、雪野の弟の名前で、俺が電話をかけたのは、番の解消をお願いするため。それだけ。それだけなのに、やたらと労力を使ってしまっていた。胸の不快感は拭えない。ごくりと唾を飲むと同時に、雪野の、声。
勝手に口が開く。勝手に口が動く。勝手に息を吸って、吐いて。勝手に声が出た。でもそれは、俺の意志だった。勝手な意志だった。取り消さない。誤魔化さない。俺の意志だ。弟、を、気にした、俺の意志。
「あの、弟の、名前って……」
『そこ気になるんだ』
おかしそうに嗤われるものの、俺は至って真剣だった。恐ろしくて、真剣だった。ほぼ確定の事実を確認するために、真剣だった。寧ろそのことしか頭に入ってきていない。俺の名前を知った経緯も、俺の存在を知った経緯も、輪姦されたことを思い出す種になるのなら、それ以上深掘りしたくなかった。雪野は俺を知っていた。名前も高校も知っていた。知って、運命だと確信したから、探した。オメガである自分を知られ、あの手この手で探し出したその過程なんか、もうどうでもいい。どうだっていい。反論したって何かが覆るわけでもあるまい。俺が今知りたいのは、雪野の弟の名前で、俺が電話をかけたのは、番の解消をお願いするため。それだけ。それだけなのに、やたらと労力を使ってしまっていた。胸の不快感は拭えない。ごくりと唾を飲むと同時に、雪野の、声。