殺すように、愛して。
俺の何が、どこが、黛をそうさせるのか、触発させるのか、分からない。そんな彼に抗えず、流されてばかりの俺も、発情期中、一番に彼を求めてしまう俺も、分からない。俺は黛をどう思って、黛に何を求めているのだろう。
黛のことを考えると、全身の細胞が活性化するようにぞわぞわと騒つく。巻いている包帯に、えも言われぬじっとりとした汗が滲むのが分かった。言いたいことを言いたい時に言いたいだけ好き勝手に垂れ流し、俺の話に耳を傾けてくれないまま一方的に通話を切られてしまいそうになる前に、さっさと要件を話さなければタイミングを見失ってしまう。スマホ越しでは見えない顔色や聞かないと分からない声色を窺っている場合ではない。これは恐らく、最初で最後のチャンスだ。この次は、ないと思え。俺の、勇気も。ないと思え。最初で、最後。だから。後悔する前に、言え。スマホを握り直し、唾を飲み込み、そっと、口を開く。
「お、れは、すこぶる、気分が、悪いです」
『……は?』
「だ、だから、つが、い、を、番を、番、を、解消、してください」
舌が上手く回らず、息が続かず、途切れ途切れ、噛み噛み。それでも、俺の言いたいことは伝わったのか、伝わった上で音のない苛立ちを携えているのか、四角い機械の向こう側にいる人物は沈黙した。乱れた呼吸音が聞こえる。否、それは俺の息だ。心音だ。言った。言えた。言ってしまった。言わないといけなかった。安堵半分、恐怖半分。それらが混ざり合い、鼓動を膨らませていく。口から心臓が出そうだった。
黛のことを考えると、全身の細胞が活性化するようにぞわぞわと騒つく。巻いている包帯に、えも言われぬじっとりとした汗が滲むのが分かった。言いたいことを言いたい時に言いたいだけ好き勝手に垂れ流し、俺の話に耳を傾けてくれないまま一方的に通話を切られてしまいそうになる前に、さっさと要件を話さなければタイミングを見失ってしまう。スマホ越しでは見えない顔色や聞かないと分からない声色を窺っている場合ではない。これは恐らく、最初で最後のチャンスだ。この次は、ないと思え。俺の、勇気も。ないと思え。最初で、最後。だから。後悔する前に、言え。スマホを握り直し、唾を飲み込み、そっと、口を開く。
「お、れは、すこぶる、気分が、悪いです」
『……は?』
「だ、だから、つが、い、を、番を、番、を、解消、してください」
舌が上手く回らず、息が続かず、途切れ途切れ、噛み噛み。それでも、俺の言いたいことは伝わったのか、伝わった上で音のない苛立ちを携えているのか、四角い機械の向こう側にいる人物は沈黙した。乱れた呼吸音が聞こえる。否、それは俺の息だ。心音だ。言った。言えた。言ってしまった。言わないといけなかった。安堵半分、恐怖半分。それらが混ざり合い、鼓動を膨らませていく。口から心臓が出そうだった。