殺すように、愛して。
雪野は、何も言わない。通話を切って強制終了することもなければ、感情的になって声を荒げることもない。怒声は苦手だ。いきなり大声を上げられるのは苦手だ。父親がそうだったから。余計に。だから、まだ、怒鳴りつけられないだけ、心臓をビクつかせる声量で叱責されないだけ、まだ、冷静でいられた。雪野が今、どんな表情をしているのか、何を考えているのか、何を言おうとしているのか、それとなく察知して、やっぱり駄目だ、無駄だと肩が重くなるほど空気が淀み始めたとしても。変に取り乱して、混乱するというようなことはなかった。俺の喧しい動悸に紛れて、雪野の喋る気配がする。
『……ふざけてんの? するわけないだろ』
鳴海くんも、気分悪いって言いながら、本当は噛まれて楽になっただろ。これで、発情期の度に怯えずに済むようになったんだから。それに、俺と鳴海くんは、運命なんだよ。他の誰にも邪魔されない、邪魔できない関係。強い繋がり。それを俺はずっと探し求めて、やっと、やっと手に入れたのに、それなのに、番を解消しろだって? 笑わせんな。俺は番を解消するつもりはない。はっきりと断言する声には、異論は認めないという確かな強い意志を感じた。
予想はしていた。上手くいかないであろうことは予測していた。それでも、それで、はい、そうですか、分かりました、と簡単に身を引いて、納得もしていないのに納得することなんかできるわけがなかった。ここは、妥協してはいけない。この問題には、流されてはいけない。無視をしてはいけない。この通話を切ってしまったら、もう、俺は、雪野にものを頼めない。何の根拠もなくそんな気がしてしまい、焦りが募る。繋がってしまった縁を切ってもらわなければ、俺も雪野も、危ないのだ。黛は、何をするか分からない。
『……ふざけてんの? するわけないだろ』
鳴海くんも、気分悪いって言いながら、本当は噛まれて楽になっただろ。これで、発情期の度に怯えずに済むようになったんだから。それに、俺と鳴海くんは、運命なんだよ。他の誰にも邪魔されない、邪魔できない関係。強い繋がり。それを俺はずっと探し求めて、やっと、やっと手に入れたのに、それなのに、番を解消しろだって? 笑わせんな。俺は番を解消するつもりはない。はっきりと断言する声には、異論は認めないという確かな強い意志を感じた。
予想はしていた。上手くいかないであろうことは予測していた。それでも、それで、はい、そうですか、分かりました、と簡単に身を引いて、納得もしていないのに納得することなんかできるわけがなかった。ここは、妥協してはいけない。この問題には、流されてはいけない。無視をしてはいけない。この通話を切ってしまったら、もう、俺は、雪野にものを頼めない。何の根拠もなくそんな気がしてしまい、焦りが募る。繋がってしまった縁を切ってもらわなければ、俺も雪野も、危ないのだ。黛は、何をするか分からない。