殺すように、愛して。
思いついたことを次から次へと発してしまったがために、要領を得ない内容となってしまっていたが、理解力のある由良はうまく汲み取ってくれたらしく、ごめん、ごめん、迷惑かけてばかりでごめん、由良、と常に感じている劣等感や情けなさ、申し訳なさに首を垂れる俺に、兄さんは悪くないよ、と安心させるように微笑んでみせたのだ。悪くないことはないのに、悪くない、悪くないよ、と言い聞かせるように続けられ、俺が病院で混乱した時のように抱擁されてしまえば、その一瞬の安心感のうちに全て丸め込まれてしまう。迷惑だなんて思ったことは、一度たりともないよ、と一文字一文字を俺に届けるようにはっきりと断言してみせた由良の、嘘の感じられない言葉の数々に、俺はずっと、それこそ今も、甘えてしまっていた。
由良の手によって次第に吐き気も治まり、俺は自身の手の甲で口元を拭った。由良はまだ俺の視界を覆っている。由良、ごめん、もう大丈夫、ありがとう、と乾いた声で伝えて彼の手に触ると、待って、今、流すから、と彼は俺の背中を優しく摩っていた手で便器の蓋を閉めた。そんな気配がして、すぐに、水の流れる音がした。その際、彼の身体が、体温が、後頭部から背中にかけて触れるような感覚があって、夜中なのもあってか、変な気を起こしてしまいそうになる。視覚を奪われているせいでもあるだろうか。だとしても、由良は俺の、血の繋がった弟なのに。
ようやく由良の手が離れ、途端に目を刺激する眩い光に顔を歪める。兄さん、と揺れる声色だけでもそうだと分かるほど気にかけてくれている由良に、大丈夫、助かった、ありがとう、と不安を少しでも和らげたく、ゆっくり丁寧に唇を動かして答えた俺は、彼を前に変な気分になりかけていたことを悟られないよう、こっそりひっそり最善を尽くした。そんなことに意識を向けてしまえるくらいには、少しだけ心にゆとりもできていた。
由良の手によって次第に吐き気も治まり、俺は自身の手の甲で口元を拭った。由良はまだ俺の視界を覆っている。由良、ごめん、もう大丈夫、ありがとう、と乾いた声で伝えて彼の手に触ると、待って、今、流すから、と彼は俺の背中を優しく摩っていた手で便器の蓋を閉めた。そんな気配がして、すぐに、水の流れる音がした。その際、彼の身体が、体温が、後頭部から背中にかけて触れるような感覚があって、夜中なのもあってか、変な気を起こしてしまいそうになる。視覚を奪われているせいでもあるだろうか。だとしても、由良は俺の、血の繋がった弟なのに。
ようやく由良の手が離れ、途端に目を刺激する眩い光に顔を歪める。兄さん、と揺れる声色だけでもそうだと分かるほど気にかけてくれている由良に、大丈夫、助かった、ありがとう、と不安を少しでも和らげたく、ゆっくり丁寧に唇を動かして答えた俺は、彼を前に変な気分になりかけていたことを悟られないよう、こっそりひっそり最善を尽くした。そんなことに意識を向けてしまえるくらいには、少しだけ心にゆとりもできていた。