殺すように、愛して。
 ただでさえ淀んでいる空気。それをさらに悪化させるかのように、由良、と少し高めの女の声もして、気配がまた一つ、増えた。母親だった。母親は自分の夫が息子を襲っていても完全無視で、俺と同じように壊れ始めている由良に近づき、これは由良のため由良が彼奴に誘惑される前に終わらせておくの由良のためなのよこれは由良のため、と崩壊する由良を後押しするようにぶっ飛んだ呪文を唱え続けた。

 父親に襲われる俺。俺を襲う父親。泣き崩れて壊れる由良。由良を壊す母親。もう何が何だか分からない。カオスだった。地獄絵図だった。崩壊する。家庭も、俺も、由良も。俺がオメガのせいで。それだけで、もう、全部、全部、おかしくなる。俺が、オメガ、な、だけで。引き金は俺で、俺がいなければ、こんなことにはならなかった。俺が、いなければ。俺が。俺が。あ、う、も、もう、もう、いやだ。いやだ。死にたい。死にたい死にたい死にたい。死にたい。まゆずみ。助けて。死にたい。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。

 父親に、強行突破をするように侵入され、奥を、乱暴に、身勝手に、突かれた。まゆずみまゆずみまゆずみ。痛いのに発情のせいで感じてしまう俺は、身体的、精神的苦痛に断末魔の叫び声を上げるが、抽挿は激しさを増すばかりで。まゆずみまゆずみまゆずみ。まるで玩具を使用して自慰をするように、自分だけが気持ちよくなる父親は、そのまま、躊躇いもなく、俺の、中に、出した。俺の、中に。中に。ぐらぐらと今にも崩れ落ちそうになっていた何かが、完全に壊れた瞬間だった。
< 47 / 301 >

この作品をシェア

pagetop