殺すように、愛して。
 捲し立てるように饒舌に、それでも冷静さは失っていないと感じる淡々とした口調で、地面にへばりつきそうなほどに重たい鎖を俺に巻きつける黛は、無意識なのか故意なのか、制服の襟もネクタイも巻き込むように首に手をかけていて。あっという間もなく息苦しさを通り越して息ができなくなったことに全身の血が驚いて激しく脈打つ。頭よりも先に体が動き、咄嗟に黛の腕を掴んで引き離そうとするが、所詮俺はオメガだ。オメガがアルファに勝てるはずもなかった。

 酸素が吸えないことに混乱して、自分の口から呻くような、喘ぐような声が漏れる。黛は、片手で俺の頚椎をなぞりながら、片手で俺の気管を絞めていた。首の前と後ろを強と弱の力で挟まれ、首全体を責められているような感覚に気が遠くなりかける。黛の指は筋に食い込んでおり、横からも気道を塞がれていた。全く息ができない上に、全く殺意の感じられない首絞めに戦慄し、俺は渦巻く思考から抜け出せなかった。

 やめて。苦しい。なんで。首を。絞めるの。まゆずみ。どうして。苦しい。息が。できない。まゆずみ。あ、は、しぬ。しぬ。まゆずみ。まゆずみ。やめて。やめて。また。殺される。まゆずみ。に。ころされる。は、は、いき、できな、
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