愛があなたを見捨てたとしても
…どうして、こんな事に。
「あの、店内で暖まったらどうですか?外寒いですし、ほら」
何とかしてこの客を店頭からずらしたいわたしは、スマホの画面を見せて懲りずに話し掛けた。
「…」
再び傾げられた首が、今度はスマホの真上で動きを止める。
何故なら、私が出した天気予報の画面には“夜から朝方にかけて雨が降り続けるでしょう”と表示されていたのだから。
「雨、しばらく止まないですよ。店内で雨宿りしたほうが」
「いい」
「え?」
さすがに雨が降り続けるとは思っていなかったのだろう、彼は一瞬表情を曇らせたのに何故かわたしの提案を断った。
木の根のようにその場にはって動かなかった足が、ゆらりと一歩を踏み出す。
「なら、帰る」
「いや、ちょっと…!」
どうしてこのお客さんは、わたしの想像の斜め上をいく行為に出るんだろう。
「風邪引いちゃいますよ!ハンバーガーも濡れちゃいますし!」
わたしのお店の重要な収入源である常連客が風邪でも引いたとなれば、それはそれで一大事だ。多分。
「待って下さい!」
慌てて折り畳み傘を開いたわたしは、走ってハンバーガー男の後を追いかけた。
数秒前に外の世界に足を踏み出したばかりの男性のジャージの色は、来店された時以上に酷いまだらに染まっていて。
「あの、店内で暖まったらどうですか?外寒いですし、ほら」
何とかしてこの客を店頭からずらしたいわたしは、スマホの画面を見せて懲りずに話し掛けた。
「…」
再び傾げられた首が、今度はスマホの真上で動きを止める。
何故なら、私が出した天気予報の画面には“夜から朝方にかけて雨が降り続けるでしょう”と表示されていたのだから。
「雨、しばらく止まないですよ。店内で雨宿りしたほうが」
「いい」
「え?」
さすがに雨が降り続けるとは思っていなかったのだろう、彼は一瞬表情を曇らせたのに何故かわたしの提案を断った。
木の根のようにその場にはって動かなかった足が、ゆらりと一歩を踏み出す。
「なら、帰る」
「いや、ちょっと…!」
どうしてこのお客さんは、わたしの想像の斜め上をいく行為に出るんだろう。
「風邪引いちゃいますよ!ハンバーガーも濡れちゃいますし!」
わたしのお店の重要な収入源である常連客が風邪でも引いたとなれば、それはそれで一大事だ。多分。
「待って下さい!」
慌てて折り畳み傘を開いたわたしは、走ってハンバーガー男の後を追いかけた。
数秒前に外の世界に足を踏み出したばかりの男性のジャージの色は、来店された時以上に酷いまだらに染まっていて。