愛があなたを見捨てたとしても
安いものを優先して購入するところ、節約家のわたしとそっくりだ。


「分かります。うちのハンバーガーは安いですし、美味しいですもんね」


ふふっと笑みを零しながら、

「いつも買って下さってありがとうございます」

と、バイトらしいお礼を伝えると。


「え、何で知ってんの」


急に足を止めたハンバーガー男が、怪訝な顔でこちらを見てきた。

今までわたしを誰だと思っていたのだろう。


「えっ、いつもお客さんのレジ担当してるのわたしですよ」

「は?」

「お客さん、ずっと下向いてるから気付かなかったのかもしれませんけど。いつも注文聞いてるのわたしです」


今日の会計時、一応”ありがとうございます”とお礼を伝えたつもりだったけれど、客によってはその記憶すら残らないのか。


少し残念に思いながら、

「番号札202番のお客さまー、お待たせ致しました、ハンバーガーです」

と声真似を披露すれば、じっとわたしの顔を見て黙っていたハンバーガー男の眉がピクリと反応する。


「…ほんとだ」

そして彼は、わたしを見下ろしたまま僅かに頬を緩めたんだ。




「…あの、駅に向かわれないんですか…?」


そして、それから数分歩き続けただろうか。
< 15 / 23 >

この作品をシェア

pagetop