愛があなたを見捨てたとしても
その様子だと、中のハンバーガーも無事かどうか…。

それに、男性の夕食が小さなハンバーガー1つだけというのはいかがなものか。

わたしでも満腹にはならないのだ、彼がそれだけで満足するはずがない。

この人が店の常連客であることから、1人暮らしの彼が普段自炊をしない人だということは容易に想像が出来た。


「えっと、もし良ければ」


ちらりと腕時計を見れば、時刻は8時半前。

もう、母は家に居ないはず。


「わたしの家、来ますか?温かい夕飯あるので」

「…」


目深に被ったキャップから覗く、漆黒の闇。

ハンバーガー男は、困惑気味に手に提げた袋を見下ろした。


「あ、大丈夫ですよ。わたしの家、ここから近いですし」


それに、と言葉を付け加える。


「ハンバーガーも、温めますから」

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