愛があなたを見捨てたとしても
そう思いつつも確認すれば、

「ん。…美味しい」

返ってきたのは、想像通りの答え。


「良かったです」

「温かい」

「え?」


丁度ご飯を口に入れていたわたしは、続いて聞こえてきたハンバーガー男の台詞に顔を上げた。


「……温かくて、美味しい」


目の前にいるのは、週に何度か顔を合わせる常連客。

なのに、真正面からしっかりと見えたその顔はいつもと違って綻んでいて。


「そうですね。寒い日にぴったり」


ハンバーガー男の目に微かな光が宿っているのがはっきりと見えて、わたしの心もじんわりと温かくなるのを感じた。



「そういえば、学生さんですか?」

「え」

「ああいや、ただ気になっただけなんですけど…」


わたしがまたもや口を開いたのは、誘惑に負けてご飯を食べ始めたハンバーガー男が鮭を一切れ口に入れた時だった。

彼は確かに背も高いし顔立ちも大人びているけれど、20歳を超えた大人という雰囲気はない。

だから、多分大学生くらいなんだろうな、と思いながら質問すると。


「高2だけど」


予想もしていなかった答えが返ってきた。


「へ?高2!?」

「何だよ」


思わず、箸を取り落としそうになった。

宙を舞ったそれを間一髪でキャッチしたわたしの動きがうるさかったのか、ハンバーガー男はあからさまに引き気味の顔をしている。
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