ドラマティック トレイン ~ 運命の出会いは通学中に起きる
BBQ当日ーー

「おまたせー!」

真美ちゃんが大きく手を振りながら足早にこちらへと向かってくるのが見えた。真美ちゃんの後ろにはタケっちがめんどくさそうにゆっくり歩いて着いてくるのも見える。BBQに誘う時に磐田くんがくる事を伝えると陽キャな真美ちゃんは二つ返事で参加すると喜んでいたが、普段、二次元にしか興味のないタケッちがアウトドアなイベントに参加するのはとても珍しいことで驚いた。不思議に思って参加の理由を聞きてみると『真美ちゃんが大騒ぎしているイケメン磐田くんのビジュを拝んでおこうかと思って。』と言っていた。『二次元を越える三次元がいるとは思えないけどね…。』と最後に付け加えてもいたのだが、わたし的には仲良し3人で楽しめるのであれば、理由はどうあれタケッちが来てくれたのは嬉しい事だった。

「で?例のイケメンは?」

はしゃぐ真美ちゃんの後ろからタケッちが磐田くんを探す。

「まだ来てないの。あ!来た来た!タケッちあそこの人。」

制服姿しか見たことがないので磐田くんのオーバーサイズのブルーグレーのパーカーに黒のスタンドカラーのブルゾンを羽織った私服姿はとても新鮮でかっこよかった。

「奈々ちゃんお待たせ!」

「本当に一人で来たんだね。」

「うん、奈々ちゃんと沢山話がしたいからね。二人が奈々ちゃんのお友達?」

そう言うと私の側に立つ真美ちゃんとタケッちに目を向けた。

「初めまして清水 真美(しみず まみ)です。」

磐田くんの目をしっかり見て可愛らしく挨拶を終えると真美ちゃんはタケッちにも自己紹介をするように肘でつついて合図を送る。

「あ…、武田 晴湖《たけだ はるこ》です。はじめまして…。」

人見知りがちなタケッちは真美ちゃんとは違って目を合わせることなく挨拶をした。

「磐田です。磐田 耕史(いわた こうじ)です。えっと…奈々ちゃんとは…」

「はいっ!大丈夫です!全部聞いてます!奈々がご迷惑おかけしました!」

真美ちゃんが深々と頭を下げた。

「えっ?奈々がが迷惑かけたって…。お世話になった例の男の子来たのーっ??」

真美ちゃんの声が姉に届いたのか停めてあったマイクロバスから降りてきた。車を何台も出すより行きも帰りもみんな一緒の方が楽しいだろうとバイト先のホテルで所有しているマイクロバスを借りてきたと言っていた。

「奈々の姉の弥椰(やや)です。不出来な妹がお世話になりました。今日は楽しんでいってください!」

「初めまして。磐田です。勘違いをして迷惑をかけたのはこっちの方です。今日は楽しいイベントに誘っていただいてありがとうございます。」

「さぁ、みんな車に乗っちゃって!」

「「はーい!」」

姉は磐田くんと軽く挨拶をすると皆を車内へと案内し、真美ちゃんと私で元気よく返事をする。車内は二人席がならんでいたので、真美ちゃんとタケッち、私と磐田くんのペアで横一列に座ることにした。
真美ちゃんとタケッちと話しやすいようにと窓側に磐田くんが座り通路側に私が座る形をとった。

「今日の奈々ちゃん、いつもと雰囲気が違うね。」

磐田くんも私と同じことを思ったのだろうか?

「普段、会う時は制服だからね。」

マジマジと見られたのかと思うと照れが出てしまう。

「それもあるだろうけれど、似合ってて可愛いよ。」

デニムのワイドパンツに白のカーディガンとインナーに薄いイエローのロンTを合わせたシンプルなコーデだが、姉と二人で1時間かけて選んだものだった。なので似合ってると言われとても嬉しくなる。

「…ありがとう。」

男の子に褒められ慣れていないので恥ずかしくてどこかむずがゆくなり、恥ずかしくて磐田くんの顔を見れずうつむいていると、すぐ横の通路で『ガツンっ!』と補助席を倒す音が聞こえた。

びっくりして振り返ると、更におどろく事に倒された補助席には葵くんがふんぞり返るように座っていた。

「えっ?」

何でここに葵くんがいるのかわからず思考が停止していると

「何黙ってみてんだよ。挨拶ぐらいしろよ。」

と、不機嫌な感じで喋りだした。

「お…おはよう。な…何で…」

「おばさんに今日BBQに行く話を聞いたから弥椰(やや)(ねえ)に許可取った。」

ここにいる理由を尋ねようとすると遮るように葵くんは返事した。戸惑いながらチラッと姉をみると何を意味するアイコンタクトなのかウィンクで返された。

「奈々!その人知り合い??」

葵くん越しに覗き込むように好奇心旺盛な真美ちゃんが聞いてきた。

「あー…うん。お隣に住んでる横山 葵(よこやま あおい)くん。で、こっちが真美ちゃんとタケッちと磐田くん。」

「初めまして。同い年なんで、葵って下の名前で呼んでください。最近までアメリカに居たんだけど、今は奈々と一緒に住んでます~。」

葵くんは私が三人を紹介すると真美ちゃんとタケッちには笑顔を向けるがなんとなく磐田くんには睨みつけているような感じで話しをしたが、そこに私は気が付かなかった。

車は動き出し、高速道路は渋滞もなく順調に進んでいた。

「磐田くんって、高校は第一なんですよね?うちの学校にも磐田くんのファン多いんだよー!」

と、真美ちゃんが磐田くんに話しかけた。

「ファンだなんて大げさだよ。弓道部がある学校が珍しいから見に来てる子が多いだけだと思うよ。」

磐田くんは真美ちゃんに返事をしてニコっと笑顔を向ける。

「マジで第一?俺、来月からそこに転入するんだけど。」

「葵くん、その話、初めて聞いたんだけど。」

第一高校はこのあたりではトップクラスの偏差値だ。まさかこんなチャラい葵くんが転入する予定になっているなんて想像もしていなかった。

「え?聞いてない?おばさんには話したんだけどなー。やべっ、学校通う前に友達できた(笑)」

同じ学校に通うことが分かったので急に親近感を持ったのか、磐田くんと葵くん互いに下の名前で呼び合い談笑し始めた。
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