ドラマティック トレイン ~ 運命の出会いは通学中に起きる
8.戸惑い
「あんた、そんな所で突っ立って何やってんの?」
声をかけて来たのは姉だった。
「お姉ちゃあああああああああああん!!!!」
姉の顔をみて安心したのかホッとして抱きつくとともに涙が溢れて来た。
「おぉ、妹よ。どうした?なにかあったの??」
一瞬、隣の家の二階にある葵くんの部屋をチラッと見るがカーテンが閉じられて様子はわからない。葵くんの部屋へ視線を動かした事に姉は気づいたのか、
「葵と何かあった?とりあえず家に入ろ?」
と言った。
涙でうまく話せない私の優しく背中に手を当てて、家の中へと進ませた。
玄関で靴を揃える事もせず、ただ茫然と姉に手を引かれるまま廊下を進みリビングのソファに座る。
姉はパタパタとスリッパを鳴らしてキッチンへと向かう。
「何飲むぅ〜?冷蔵庫にレモンティーとウーロン茶があるけどー。」
「ウーロン茶で…。」
「ほーい。」
姉はテキパキと飲み物の用意をしてソファの前にあるカフェテーブルにおいた。
「んで?」
姉は自分用に用意したレモンティーのグラスを手に取って一口飲んだ。
「あ…葵くんにキスされた。」
「葵とキスなんて子供の頃に『白雪姫』ごっこで何度もやってんじゃん。キスくらい免疫あったんじゃないの?」
幼い子どものごっこ遊びでのキスで恋愛的免疫がつくわけがない。
「だってあれはごっこ遊びだし…。そんな意味で意識した事無かったし…。」
「葵はずっとあんたのこと好きだったじゃん。」
「えっ!?そんな事ないよ!いつも意地悪するように揶揄って……。」
『普段、からかってばかりなのは奈々の笑顔が見たいから。奈々の笑顔は俺にとって宝物だからね。』
途中まで言葉にしたところで葵くんにさっき言われた言葉を思い出し、その後の言葉を言うのをやめた。
少しだけ間が空いてしまったが姉に聞いてみる。
「何でお姉ちゃんは葵くんが私を好きだって知ってたの?」
「そりゃ、小さい頃から一緒だったもん。見てればわかるでしょー。」
「……まったく思いもしなかった。」
「それにさー。『白雪姫』ごっこで本当にキスしないで済むように生き返る薬にしてたキャンディあったじゃない?いつもちゃんと葵に渡してるのに隙を見ては『もらってない。』って言い張って、あんたが王子様からのキスをねだるように仕向けてたの見ちゃったし〜。」
「‥‥何その話。」
確かに時々そんなことはあったけど…。それが、意図的にだったなんて姉に言われるまでわからなかった。
「とにかく。葵は誰が見ても子どもの時から奈々のことが好きだったの。気付いてないのは本人くらいよ。まぁ、葵もアメリカから帰って来たら本にしか興味のないあんたに男の影が見えたから焦ったのかもねー。ほら、バーベキューに誘った磐田くん?だっけ?」
姉は飲み物と一緒に持って来たチョコチップクッキーに手をつけながら言った。
確かに最近、自分でも磐田くんの事が好きだと気付いた。磐田くんと話をしていると楽しいし、とてもドキドキする。しかし、今は葵くんにキスされた事実が頭から離れず、さらに、彼の熱い眼差しが頭に焼き付いてしまっていて、磐田くんといる時のように心臓がドキドキしていた。
「お姉ちゃん…。どうしよう…。自分では磐田くんの事が好きになってるって思ってたのに、葵くんにキスされてドキドキしちゃってる……。私って浮気性!?それともただ男好き!?」
「あんたねー、子どもの頃から見慣れてるからそう感じないかもしれないけど、葵ってなかなか美男子よぉ。そんな男の子にキスされて口説かれたんだからドキドキするのが当たり前!あんなのに口説かれて不快に思う女子いないから(笑)」
うーん。確かに言われてみれば葵くんってかっこいい方だと思う。真美ちゃんもタケッちもかっこいいって言ってたし…。
「磐田くんとはどんな感じなの?『付き合おう』みたいな話でてるの??」
「やだっ!そんな話あるわけ無いじゃん!私が一方的に磐田くんの事が好きだなぁ〜って思ってるだけなの。」
「えーーーっ。こないだのバーベキューの時の様子だと彼も奈々のこと好きなのかなぁーって思ってたんだけど、それっぽい話しないの?」
「…うん。そう言う話は…。電車で偶然会った時に少し話したり、『部活頑張ってね』とか『おやすみなさい』とか簡単なメッセージのやり取りしか……。」
「ヘェ〜。なんか以外〜。葵の存在が現れたからもっと積極的に来てるんかとおもってたわぁー。まぁ、最後にどちらを選ぶかは奈々が決める事だけどねー。」
……私が決める。…か。
『そう言えば耕史は今は彼女とかいらないって言ってたぞ。』
最後に葵くんが言ったことを思い出した。
磐田くんは私のことどう思ってるんだろう。電車で時々会う知ってる女の子から友達くらいにはレベルは上がっているのだろうか??
彼はいつも優しく微笑みながら話をしてくれるのは、彼が優しいからであって、みんなと同じ扱いなのだろうか……。岩田くんにとって私ってどんな存在なのかとても気になり出した。
「どっちを選んでも、私は奈々が幸せならそれでいいよ。」
「お姉ちゃん……。ありがとう。」
その晩、久々に姉と一緒にお風呂に入り、沢山恋バナをした。
次の日の朝、通学で葵くんと一緒になりたく無くて、わざと1時間早く家を出た。
声をかけて来たのは姉だった。
「お姉ちゃあああああああああああん!!!!」
姉の顔をみて安心したのかホッとして抱きつくとともに涙が溢れて来た。
「おぉ、妹よ。どうした?なにかあったの??」
一瞬、隣の家の二階にある葵くんの部屋をチラッと見るがカーテンが閉じられて様子はわからない。葵くんの部屋へ視線を動かした事に姉は気づいたのか、
「葵と何かあった?とりあえず家に入ろ?」
と言った。
涙でうまく話せない私の優しく背中に手を当てて、家の中へと進ませた。
玄関で靴を揃える事もせず、ただ茫然と姉に手を引かれるまま廊下を進みリビングのソファに座る。
姉はパタパタとスリッパを鳴らしてキッチンへと向かう。
「何飲むぅ〜?冷蔵庫にレモンティーとウーロン茶があるけどー。」
「ウーロン茶で…。」
「ほーい。」
姉はテキパキと飲み物の用意をしてソファの前にあるカフェテーブルにおいた。
「んで?」
姉は自分用に用意したレモンティーのグラスを手に取って一口飲んだ。
「あ…葵くんにキスされた。」
「葵とキスなんて子供の頃に『白雪姫』ごっこで何度もやってんじゃん。キスくらい免疫あったんじゃないの?」
幼い子どものごっこ遊びでのキスで恋愛的免疫がつくわけがない。
「だってあれはごっこ遊びだし…。そんな意味で意識した事無かったし…。」
「葵はずっとあんたのこと好きだったじゃん。」
「えっ!?そんな事ないよ!いつも意地悪するように揶揄って……。」
『普段、からかってばかりなのは奈々の笑顔が見たいから。奈々の笑顔は俺にとって宝物だからね。』
途中まで言葉にしたところで葵くんにさっき言われた言葉を思い出し、その後の言葉を言うのをやめた。
少しだけ間が空いてしまったが姉に聞いてみる。
「何でお姉ちゃんは葵くんが私を好きだって知ってたの?」
「そりゃ、小さい頃から一緒だったもん。見てればわかるでしょー。」
「……まったく思いもしなかった。」
「それにさー。『白雪姫』ごっこで本当にキスしないで済むように生き返る薬にしてたキャンディあったじゃない?いつもちゃんと葵に渡してるのに隙を見ては『もらってない。』って言い張って、あんたが王子様からのキスをねだるように仕向けてたの見ちゃったし〜。」
「‥‥何その話。」
確かに時々そんなことはあったけど…。それが、意図的にだったなんて姉に言われるまでわからなかった。
「とにかく。葵は誰が見ても子どもの時から奈々のことが好きだったの。気付いてないのは本人くらいよ。まぁ、葵もアメリカから帰って来たら本にしか興味のないあんたに男の影が見えたから焦ったのかもねー。ほら、バーベキューに誘った磐田くん?だっけ?」
姉は飲み物と一緒に持って来たチョコチップクッキーに手をつけながら言った。
確かに最近、自分でも磐田くんの事が好きだと気付いた。磐田くんと話をしていると楽しいし、とてもドキドキする。しかし、今は葵くんにキスされた事実が頭から離れず、さらに、彼の熱い眼差しが頭に焼き付いてしまっていて、磐田くんといる時のように心臓がドキドキしていた。
「お姉ちゃん…。どうしよう…。自分では磐田くんの事が好きになってるって思ってたのに、葵くんにキスされてドキドキしちゃってる……。私って浮気性!?それともただ男好き!?」
「あんたねー、子どもの頃から見慣れてるからそう感じないかもしれないけど、葵ってなかなか美男子よぉ。そんな男の子にキスされて口説かれたんだからドキドキするのが当たり前!あんなのに口説かれて不快に思う女子いないから(笑)」
うーん。確かに言われてみれば葵くんってかっこいい方だと思う。真美ちゃんもタケッちもかっこいいって言ってたし…。
「磐田くんとはどんな感じなの?『付き合おう』みたいな話でてるの??」
「やだっ!そんな話あるわけ無いじゃん!私が一方的に磐田くんの事が好きだなぁ〜って思ってるだけなの。」
「えーーーっ。こないだのバーベキューの時の様子だと彼も奈々のこと好きなのかなぁーって思ってたんだけど、それっぽい話しないの?」
「…うん。そう言う話は…。電車で偶然会った時に少し話したり、『部活頑張ってね』とか『おやすみなさい』とか簡単なメッセージのやり取りしか……。」
「ヘェ〜。なんか以外〜。葵の存在が現れたからもっと積極的に来てるんかとおもってたわぁー。まぁ、最後にどちらを選ぶかは奈々が決める事だけどねー。」
……私が決める。…か。
『そう言えば耕史は今は彼女とかいらないって言ってたぞ。』
最後に葵くんが言ったことを思い出した。
磐田くんは私のことどう思ってるんだろう。電車で時々会う知ってる女の子から友達くらいにはレベルは上がっているのだろうか??
彼はいつも優しく微笑みながら話をしてくれるのは、彼が優しいからであって、みんなと同じ扱いなのだろうか……。岩田くんにとって私ってどんな存在なのかとても気になり出した。
「どっちを選んでも、私は奈々が幸せならそれでいいよ。」
「お姉ちゃん……。ありがとう。」
その晩、久々に姉と一緒にお風呂に入り、沢山恋バナをした。
次の日の朝、通学で葵くんと一緒になりたく無くて、わざと1時間早く家を出た。