ドラマティック トレイン ~ 運命の出会いは通学中に起きる
トン、トン。
リズムよく人のお皿の上にあるオリーブをフォークに刺すと葵くんは自分の口に入れた。
「お前、苦手だろ?」
「…まぁ。そうだけど。葵くんも苦手じゃなかったっけ?」
昔、サラダに入っていたオリーブを2人で押し付けあった記憶がある。
「俺は大人になったから食べられる。」
得意げな顔をしてモグモグと口を動かす。
「何それ!私が子どもだっていいたいの?」
少し、頬を膨らませて、意地けた態度を見せてみた。
「ばーか、俺の優しさをアピってるんだってば。」
「2人とも仲良いね。」
タケッちがいうと調子に乗った葵くんが、
「だろ?仲良すぎてどっから見ても付き合ってるように見えるだろ?」
と言った。
「……付き合ってないし。」
小声だが磐田くんがボソッと漏れた声に皆が反応する。
「「「えっ。」」」
「あ、いや…、付き合ってないのにそんなこと言ったら、奈々ちゃん困るかなぁって…、実際、困ってる顔してたから。」
珍しく磐田君が早口で言った。
「そうだけど、耕史は俺の応援してくれないの?彼女作らない主義だから俺と奈々が付き合っても耕史には何の影響もないよなぁー?」
彼女をつくらないって、こないだ葵くんが言ってたことだ…。
「今は彼女は要らないって言っただけ。恋は自然と落ちるものらしいからね〜。」
と、私の目を見てニコリと微笑まれ、ドキッと心臓がはねた。
「なんだよ、どーゆー意味だよ。」
「深い意味はないさ。さーて、デザートでも取りにいこっかな。」
そう言って、磐田くんが顔を上げた時だった。
「先輩…?」
「…あ。松田??」
ホテルのランクに合わせて着飾った私たちと年頃の近い女性が磐田くんと視線が合うと声をかけた。
一瞬誰かわからなかったが、磐田くんの口から出た名前のおかげで、以前、乗り換えの駅で会ったこがある後輩の女の子だと気付いた。一つ下の女の子にしては珍しく畏まったワンピースを着ておそらく美容室でセットされたであろうゆるふわなハーフアップのヘアスタイルをしてきた。
「愛理、どうした?」
磐田くんの後輩の女の子の後ろから年配の男性の声がした。
「パパ、偶然部活の先輩がこちらにいらしたの。先輩、こちらが父です。」
後輩の女の子は丁寧に磐田くんを紹介した。こないだ駅で見かけた時の口調はまるで子供っぽい印象だったので、親の前ではこんなに丁寧に話せるのかと驚いた。
「初めまして、第一高校で弓道部の副部長をしてます磐田です。松田さんにはマネージャーをお願いしていて色々と助かってます。」
「こちらこそはじめまして。娘がいつもお世話になっているようで。」
恰幅の良い松田さんのお父さんは娘のために丁寧に頭を下げた。
「耕史??」
磐田くんは名前を呼ばれた方に顔を向けて目を見開いた。
「親父!?てか、兄貴まで何で…?」
松田さんのお父さんの後ろから同じく年配の男性と若いい男性がこちらにやってくると、その年配の男性を磐田くんは『親父』と呼んだ。
「こんなホテルで友達と食事とはいいご身分だな。親の言う事は聞かずとも親の金はしっかり使うんだな。」
「父さん、声が大きいよ。耕史の友達の前でその言い方はないだろ。」
お兄さんは磐田くんを庇うように言ったが、磐田くんのお父さんの声はしっかり私たちに届いていた。
…なんか、磐田くんのお父さん、ひどい言い方。
仲悪いのかなぁ。
「お誘いしたのは私なんです。姉からこちらの招待券を頂いたもので。」
少しムッとしたので言い返してやったが、私の言葉は無視された。
「今日はちょっとした顔合わせなんだ。こっちに来て邪魔だけはするなよ。」
磐田くんのお父さんはそう言うと松田さんのお父さんに声をかけ、ウェイターが案内する席へと歩いて行った。
「耕史、邪魔して悪かったな…。今日はラフな見合いみたなやつなんだ…。」
「兄貴も大変だな。」
「親父の会社の得意先の社長さんのところに娘さんがいてお互いの子どもを会わせようって酒の席で盛り上がったようなんだ。」
この場にいる理由を簡単に説明するとお兄さんは離れて行った。
「…なんか、空気悪くしてごめん、デザート取ってくるよ。」
磐田くんの顔からは笑顔が消え、静かに立ち上がるとデザートコーナーへと向かった。
「前に父親といい関係ではない話をチラッと聞いたけど、あそこまでとはなぁ……。てか、あの後輩の女の子、学校だといつも耕史にまとわりついててストーカーっぽいから、今日もしっかりついてきたのかと思ってびびった。」
磐田くんが席を立った後、私とタケッちだけに聞こえる声でこそっと葵くんが言った。
「それってもしかして…。真美ちゃんから聞いたんだけど、磐田くんを狙う女の子が現れると片っ端から潰しにはいるって後輩じゃ……。さっき、その子のせいで彼女作らないのかって本人に軽く聞いてみたんだけど、噂なだけで悪い子じゃないよって……。」
「あー、多分そうだと思う。クラスの奴の話だとかなりヤバいって。部活間に合ったことあるんだけど、耕史以外の人間はガン無視してたぞ。」
そう言えば、私も駅で会った時はにらまれたんだっけ…。
でも……。
「証拠もないのに噂だけで決めつけるのは良くないよ。磐田くんも悪い子じゃないって言ってるならそうなのかもよ?私もデザートとってこよ!」
そう言って、話を終わらせ新しいプレートを取りに行った。
リズムよく人のお皿の上にあるオリーブをフォークに刺すと葵くんは自分の口に入れた。
「お前、苦手だろ?」
「…まぁ。そうだけど。葵くんも苦手じゃなかったっけ?」
昔、サラダに入っていたオリーブを2人で押し付けあった記憶がある。
「俺は大人になったから食べられる。」
得意げな顔をしてモグモグと口を動かす。
「何それ!私が子どもだっていいたいの?」
少し、頬を膨らませて、意地けた態度を見せてみた。
「ばーか、俺の優しさをアピってるんだってば。」
「2人とも仲良いね。」
タケッちがいうと調子に乗った葵くんが、
「だろ?仲良すぎてどっから見ても付き合ってるように見えるだろ?」
と言った。
「……付き合ってないし。」
小声だが磐田くんがボソッと漏れた声に皆が反応する。
「「「えっ。」」」
「あ、いや…、付き合ってないのにそんなこと言ったら、奈々ちゃん困るかなぁって…、実際、困ってる顔してたから。」
珍しく磐田君が早口で言った。
「そうだけど、耕史は俺の応援してくれないの?彼女作らない主義だから俺と奈々が付き合っても耕史には何の影響もないよなぁー?」
彼女をつくらないって、こないだ葵くんが言ってたことだ…。
「今は彼女は要らないって言っただけ。恋は自然と落ちるものらしいからね〜。」
と、私の目を見てニコリと微笑まれ、ドキッと心臓がはねた。
「なんだよ、どーゆー意味だよ。」
「深い意味はないさ。さーて、デザートでも取りにいこっかな。」
そう言って、磐田くんが顔を上げた時だった。
「先輩…?」
「…あ。松田??」
ホテルのランクに合わせて着飾った私たちと年頃の近い女性が磐田くんと視線が合うと声をかけた。
一瞬誰かわからなかったが、磐田くんの口から出た名前のおかげで、以前、乗り換えの駅で会ったこがある後輩の女の子だと気付いた。一つ下の女の子にしては珍しく畏まったワンピースを着ておそらく美容室でセットされたであろうゆるふわなハーフアップのヘアスタイルをしてきた。
「愛理、どうした?」
磐田くんの後輩の女の子の後ろから年配の男性の声がした。
「パパ、偶然部活の先輩がこちらにいらしたの。先輩、こちらが父です。」
後輩の女の子は丁寧に磐田くんを紹介した。こないだ駅で見かけた時の口調はまるで子供っぽい印象だったので、親の前ではこんなに丁寧に話せるのかと驚いた。
「初めまして、第一高校で弓道部の副部長をしてます磐田です。松田さんにはマネージャーをお願いしていて色々と助かってます。」
「こちらこそはじめまして。娘がいつもお世話になっているようで。」
恰幅の良い松田さんのお父さんは娘のために丁寧に頭を下げた。
「耕史??」
磐田くんは名前を呼ばれた方に顔を向けて目を見開いた。
「親父!?てか、兄貴まで何で…?」
松田さんのお父さんの後ろから同じく年配の男性と若いい男性がこちらにやってくると、その年配の男性を磐田くんは『親父』と呼んだ。
「こんなホテルで友達と食事とはいいご身分だな。親の言う事は聞かずとも親の金はしっかり使うんだな。」
「父さん、声が大きいよ。耕史の友達の前でその言い方はないだろ。」
お兄さんは磐田くんを庇うように言ったが、磐田くんのお父さんの声はしっかり私たちに届いていた。
…なんか、磐田くんのお父さん、ひどい言い方。
仲悪いのかなぁ。
「お誘いしたのは私なんです。姉からこちらの招待券を頂いたもので。」
少しムッとしたので言い返してやったが、私の言葉は無視された。
「今日はちょっとした顔合わせなんだ。こっちに来て邪魔だけはするなよ。」
磐田くんのお父さんはそう言うと松田さんのお父さんに声をかけ、ウェイターが案内する席へと歩いて行った。
「耕史、邪魔して悪かったな…。今日はラフな見合いみたなやつなんだ…。」
「兄貴も大変だな。」
「親父の会社の得意先の社長さんのところに娘さんがいてお互いの子どもを会わせようって酒の席で盛り上がったようなんだ。」
この場にいる理由を簡単に説明するとお兄さんは離れて行った。
「…なんか、空気悪くしてごめん、デザート取ってくるよ。」
磐田くんの顔からは笑顔が消え、静かに立ち上がるとデザートコーナーへと向かった。
「前に父親といい関係ではない話をチラッと聞いたけど、あそこまでとはなぁ……。てか、あの後輩の女の子、学校だといつも耕史にまとわりついててストーカーっぽいから、今日もしっかりついてきたのかと思ってびびった。」
磐田くんが席を立った後、私とタケッちだけに聞こえる声でこそっと葵くんが言った。
「それってもしかして…。真美ちゃんから聞いたんだけど、磐田くんを狙う女の子が現れると片っ端から潰しにはいるって後輩じゃ……。さっき、その子のせいで彼女作らないのかって本人に軽く聞いてみたんだけど、噂なだけで悪い子じゃないよって……。」
「あー、多分そうだと思う。クラスの奴の話だとかなりヤバいって。部活間に合ったことあるんだけど、耕史以外の人間はガン無視してたぞ。」
そう言えば、私も駅で会った時はにらまれたんだっけ…。
でも……。
「証拠もないのに噂だけで決めつけるのは良くないよ。磐田くんも悪い子じゃないって言ってるならそうなのかもよ?私もデザートとってこよ!」
そう言って、話を終わらせ新しいプレートを取りに行った。