強烈な旦那様♡おバカなカメ
バッと、夏菜の頬に触れていた手を離す。

「ん?りーくん?」
「あ、いや…
腹、減ったな。
今日の夕飯は?」

「今日はね!りーくんの好きな、カレーでーす!」

「カレー?」


『━━━━━李範、これ食べてみて!』
純香の声が、頭の中に響いた。

『んぁ?カレー?』

『そう!上手くできたんだぁー!』

『━━━━ん!旨いじゃん!』

『フフ…でしょ?』
それから、李範の好物はカレーになったのだ。



「カレーは、食いたくねぇな」

「え………」

「わりぃ…
俺、今日は飯いらねぇ。
仕事するから」
言い捨てるように言った李範は、夏菜の横をすり抜けて仕事部屋に向かった。

カシャンとドアを閉め、ずり落ちる李範。


『たまに寝言で“純香”って呼んでるんだよ?』

『君が“純香を捨てない限り”夏菜ちゃんを“本当に”幸せにできない』

━━━━━━夏菜と生見の言葉が蘇った。


「━━━━━違う!俺が愛してるのは、夏菜だ!」
声に出してみても、純香が頭の中にこびりついてるように浮かぶ。

手首のタトゥーをなぞる。

笑顔の純香。
怒った純香。
泣いている純香。
最期の……
血を流している純香が蘇った。

「あぁ…そうか……」


俺はこんなに“純香に”囚われていたのか━━━━━


その日の夜。
夏菜を抱いた、李範。

やはり、純香の顔が重なっていた。

「………んぁ…りー…く……」

ピタリと行為をやめた、李範。

「………ごめん…カメ…」
組み敷いていた夏菜から離れ、ベッド脇に腰かけた。

「え?」

「ごめん…」
頭を抱える。

「りーくん?どうしたの?」

「ごめん…」

「りーくん、謝ってちゃわかんないよ…」

「ごめん…ごめんな……」

李範は、ただ…謝罪の言葉しか出なかった。
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