強烈な旦那様♡おバカなカメ
「何してんの?」

「あ、いや…」

「まさか、カメの見舞いじゃねぇよな?」

「は?」

「………んなわけないか(笑)
お前、カメのこと避けてんだろ?
だったら、見舞いになんか来るわけないよな?」

「別に、避けてなんか……」

「じゃあ、何?」

「………」

「まぁ、いいや。
俺、急いでるから」
峰芝の横を通り、マンションに入っていく。

「あ、あの!」
「あ?」

「夏菜の具合、どうなんすか?」

「………」

「体調崩したって聞いたから…」

「関係ねぇだろ?お前には」

「え?」

「ただの風邪だ。
カメはトロくておバカなヤツだが、何事も一生懸命取り組む。
それに……お人好しで、いつも周りばかり見てるからな。
気遣いをしすぎて、疲れたんだろ。
だから、いつも頑張りすぎて体調を崩すんだ」

「そう…すか…」


次の日━━━━峰芝がバイトに出勤すると、晶子に声をかけられた。

「峰芝くん、これ」
「え?」
晶子から、可愛らしい兎の封筒を渡された。

「夏菜から。
頼まれたの。
なかなか夏菜と峰芝くんってシフトが合わないし、夏菜が渡すと受け取ってもらえないからだって」

「あ、はい。すんません」

封筒を開け、中身を見る。
手紙には━━━━━

【峰芝さんへ。
昨日、私の代わりにお仕事に出てくれたって聞いたので、お礼を言いたくてお手紙を書きました。
お休みだったのに、ありがとうございました!
あと、いつもかげでフォローをしてくれてることも、感謝してます。
本当は、会ってお礼を言いたかったんですが、きっと……私に会いたくないかなと思ったので、お手紙にしました。
このお手紙は、捨ててもらって構いません。
本当に、ありがとうございました。
円城寺 夏菜】

静かに、便箋を封筒にしまう。
「…………気づいてたんだ…」

“お人好しで、いつも周りばかり見てるからな”

峰芝は、その手紙を大事に鞄にしまった。


そしてその日のバイト終了後、夏菜に電話をかけた。
『━━━━はい』
「夏菜?
手紙を読んだよ。ありがとう」

『え?お礼は、私の方こそ……
ありがとうございます!
でもまさか、電話してくれるなんて……』

「あの…さ。
ごめんな。
避けたりして」

『え……』
峰芝の謝罪に、夏菜はフリーズしていた。
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