社長は身代わり婚約者を溺愛する
東帝ホテルに着いたのは、約束の時間の10分前だった。

ラウンジに行くと、沢山の人が椅子に座っている。

さて。この中から、どうやって相手の人を見つけるのか。

私は、芹香に質問した。

【水色のワンピースを着ているって、相手には伝えてある。】

答えは、大人しく待っていろって事ね。

私は、近くにあるソファーに座った。


すると、私に近づいてくる一人の男性がいた。

「沢井芹香さんですね。」

「はい、沢井です。」

私は立ち上がって、相手の人の顔を見て、ハッとした。

「黒崎信一郎と言います。今日は宜しくお願いします。」

「宜しく、お願いします。」


端正な顔立ち、落ち着いた物腰、優しそうな笑顔。

どれをとっても、素敵な人である事は間違いなかった。


「今日は、来て頂いて有難うございます。僕は、こういう者です。」

渡された名刺には、マーケティング会社の社長と書いてあった。

「社長さん?」

「ええ。父の代からやっている会社です。」

御曹司。社長。ハイスペックな人って、本当にいるんだと思った。
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