社長は身代わり婚約者を溺愛する
「はい。」

慌てて振り向くと、信一郎さんはポカンとしていた。

「あっ、えっと……趣味。趣味はー、確かピアノだったかな。」

すると信一郎さんが、クスッと笑った。

「何だか他人事みたいですね。」

「ふふふ、そうですね。」


やばい。もう少しでバレそうだった。

私は芹香。気を付けないと。


「信一郎さんのご趣味は?」

「そうですね。乗馬です。」

「乗馬……」

そう言えば芹香も、馬に乗った事あるって言ってたな。

お金持ちって皆、そう言うものなのかな。


「沢井薬品会社の社長と言えば、立派な馬をお持ちだと聞いています。乗せて貰った事、ありますか?」

「……まだ、ないです。」

「そうですか。残念ですね。」

待ってよ。そんなモノ持っているんだったら、予め教えておいてよ。芹香。

「それはそうと、芹香さんはお淑やかな方なんですね。」
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