社長は身代わり婚約者を溺愛する
真剣な瞳で、私を見ていてくれている。

10歳も離れているって言うのに、私の事ちゃんと一人の人間として、扱ってくれている。

なんて、素敵な人。


もし、芹香の代わりに今日来なかったら、信一郎さんとも出会えなかった。


「私も……今日来てよかったと思っています。」

「芹香さん……」


ごめん、芹香。

断るのが今日の目的なのに、私断れない。

だって、信一郎さんにもう一度会いたい。

お見合いを断って、本当は私、礼奈ですって言って。

小さな町工場の娘ですって言ったら、2度と信一郎さんに会って貰えない。


「どうしたんですか?」

「えっ?」

信一郎さんに見つめられ、ドキッとした。

どうしよう私。

今日会ったばかりの信一郎さんに、こんなにドキドキしている。


「……ああ、今日のお見合い、どう思われるのかなって考えてしまって。」
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