社長は身代わり婚約者を溺愛する
「礼奈さん。今日はこのままお帰りになってもいいと、お嬢様が申しておりました。」

「はい。じゃあ、家に帰ります。」

「家までお送り致します。」

「お願いします。」


私はほっと溜息をついた。

よかった。芹香に会うのは、また今度で。


家に着いて車から降りて、そのまま沢井の家の車は、行ってしまった。

信一郎さん、本当に素敵な人だったな。


「あら、礼奈。」

「お母さん。」

工場から偶然出て来たお母さんと鉢合わせした。

「どうしたの?そんな恰好して。」

「ははは。ちょっとね。」

まさか友人の代わりに、お見合いしてきたなんて言えない。


「そう言えば、お父さんとお母さん、お見合いで知り合ったんだよね。」

「ええ?」

お母さんは懐かしそうに、工場から見える空を見上げた。
< 19 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop