社長は身代わり婚約者を溺愛する
小さな工場と言っても、お父さんお母さんと二人でやってるんだもん。

娘の私がやらないでどうするのよ。

糸が巻かれるのを見ながら、一心不乱に働く。

ぼーっとしている暇はない。


「おい。今週、大量発注が来たぞ。」

「ええ?週半ばで?」

お母さんは驚いてお父さんの元へ行く。

「単価は一枚10円。安いな。どうする?断るか?」

「土曜日も稼働すれば、納品できない訳ではないけど。」

私はお父さんの元へ行き、発注書を手に取った。

一枚10円だけど、発注数は1万枚。

今から土曜日までフル稼働して、何とか間に合うイメージ。

「やろう。まとまったお金が入るチャンスだよ。」

「あ、ああ。」

私は糸を巻くラインに戻ると、又次の糸をセットした。

少しでも、お金を稼ぐ。

それが今の私のやりたい事。

いつまでも、赤字続きの工場なんて、やってられない。
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