社長は身代わり婚約者を溺愛する
「そうだけど。急に何?」

「いや、どうしてお父さんと結婚決めたのかなって。」

そうしたらお母さん、ちょっと照れていた。

「お見合いでこの工場来た時、お父さんの働いている姿見たんだよね。」

「へえ。」

「カッコいいなって。素敵だなって思って。そのまま決めちゃったのよ。」

「もしかして、お母さんの一目ぼれ?」

お母さんは、笑って工場の中に入って行ってしまった。


血は争えないかな。

私も信一郎さんに、一目ぼれしたようなものだ。


その時、lineで信一郎さんから連絡が来た。

【今度、美術館に行きませんか?】

美術館!なんかデートみたい。

【はい。行きます。】

直ぐに返信をして、家の中に入った。


芹香から借りたワンピースを脱ぐと、魔法が解けた気がした。

私は町工場の貧しい家の娘。

それを信一郎さんは知らない。
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