社長は身代わり婚約者を溺愛する
「そ、そう?」

お母さんがニヤニヤしている。

「デート?」

「違うよ。芹香と出かけるの。」

ウソを言って、バクバクしている。

「それにしては、女の子らしい恰好じゃない。」

「たまにはね。」

「ふーん。」

お母さんのニヤニヤは、まだ続く。

「まあ、いいんじゃない?女の子なんだから。」

「そうだよね。」

あっさりとデートだとバレて、ドキドキしているけれど、今は誤魔化すしかない。

「楽しんできなさい。」

「だから、デートじゃないってば。」

「あら、お母さん。デートって言ってないわよ。」

これだから、お母さんには敵わない。

「行って来ます。」

「気を付けてね。」

ちょっと照れながら道路に出て、歩きながら待ち合わせの美術館に向かう。

「あーあ。帰ったら絶対、今日の事聞かれるな。」

ぽつり呟きながら、駅まで急いで歩いた。
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