社長は身代わり婚約者を溺愛する
「ああ、特別なチケットだったからね。」

「特別?」

そして常設展に着いて、信一郎さんはもう一度チケットを出した。

「この美術館にはね、僕の家が資金を1/3援助しているんだ。」

「えっ……」

私はそこで立ち止まってしまった。

「そのお礼として、毎年無料のチケットが送られてくるんだ。」

「……凄いですね。」


入り口から見える、高そうな絵画達。

それが、信一郎さんの家が寄付したお金で、買われているだなんて。

世の中には、そんな美術品とか、工芸品を惜しげもなく買える人達がいるのだ。


「芹香さん、行きましょう。」

「あっ、はい。」

もう芹香の名前で、信一郎さんに呼ばれるのにも慣れた。


常設展に入って、見える世界は広がった。

たくさんの素晴らしい絵。

一つ一つ、新しい世界に連れて行ってくれる。
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