社長は身代わり婚約者を溺愛する
そして、仕入れた糸が残り少なくなった。

「ねえ、糸が無くなりそうだよ。」

「ああ……」

お父さんが私の元へやって来て、ため息をついた。

「いよいよ無くなったか。」

「仕入れは?明日来るの?」

「それが……」

お父さんが口を濁している。

きっと、何かあったに違いない。


「何?話して。」

「先月の仕入れ代、滞っているんだ。」

「えっ?じゃあ、糸入ってこないの?さっきの受注はどうする気なの?」

お父さんは困った顔をしている。

「やっぱり、無理かな。」


こうして一つの事が滞ると、次の仕事も滞る。

これじゃあ、負のスパイラルだ。


「分かった。私が何とかするから。」

私は糸を巻くのを止めると、帽子を取った。
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