社長は身代わり婚約者を溺愛する
素敵な人だったって、バレたくない。

「そっか。写真まだあるかな。見ておくかな。」

「えっ⁉」

芹香の発言に、不安が過る。

「まだ、信一郎さんの写真、持ってるの?」

「信一郎さんって言うんだ。名前も知らなかった。うん、あると思う。」


どうしよう。芹香が信一郎さんの写真を見て、素敵な人だって思ったら。

「……見るの?」

「だって、小太りの我儘オジサンなんて、興味あるじゃん。」

「芹香。どういう趣味してるの?」


芹香から興味を遠ざけようとして、却って興味を引くだなんて。

「そうだ。スマホに送って貰おう。」

「待って!」

私は芹香の行動を止めた。

「……もう断った人なんだから、どうでもいいじゃない。」

「それもそうか。」

芹香はスマホを、テーブルの上に置いた。

間一髪ってやつだった。

< 33 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop