社長は身代わり婚約者を溺愛する
しつこく聞いてくる芹香に、腹が立った。

「何でもかんでも、知ろうとしないでよ!」

思わず大きな声を出してしまった。

芹香の驚いた顔が、目に飛び込んでくる。


「礼奈?どうして怒るの?」

「……ごめん。」

「私、礼奈の力になりたいのに。」

「だからごめん。私、大丈夫だから。」

二人の間に、不穏な空気が漂う。


「分かった。でも、私いつでも礼奈の味方だから。」

うんと頷く事ができなかった。

どうして?

お金まで貸してくれる友人なんて、ほんといないのに。


「今度会った時は、お互いいい報告ができるといいね。」

私が不機嫌な態度を取ったのに、芹香はそれを直そうとしている。

だから、腹立たしい。

「私は、芹香とは違うよ。」

きっと芹香だったら、その宅配便のお兄さんと、堂々と付き合えるんだろう。

でも私は、芹香の名前を名乗らないと、信一郎さんに会う事すらできない。
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