社長は身代わり婚約者を溺愛する
本当の私は、ダメなんだ。

「どうしてそんな事言うの?礼奈だって私だって、一人の女の子じゃない。」

「違うよ。芹香はお嬢様で、私は貧乏だよ。」

芹香の視線が痛い。

「それがどうしたって言うの?恋愛には関係ないじゃない。」

「それは、お嬢様だから言えるんだよ。」

芹香の顔は、悲しい表情になった。

「相手は芹香だったら、皆OKするよ。」

「それは、私がお金持ちのお嬢様だからだって言うの?」

「そうじゃない。でも、高嶺の花には間違いないよ。芹香は。」


男性だって、お金を持っている人は、それだけで魅力的だ。

女性だって、お金持ちのお嬢さんだって知れば、手の届かない人だって、憧れの対象になる。


「言ってる事、分かんない。私の魅力は、お嬢様だけって聞こえる。」

私の代わりに、芹香が不機嫌になった。

そうじゃない。

芹香の魅力は、たくさんある。

「そう聞こえたら、ごめん。」

お互い気まずい雰囲気になるなんて、どうしてこうなったの?


ううん。芹香といい雰囲気の時なんて少なかった。

いつも私が、芹香のご機嫌を取っていたんだ。
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