社長は身代わり婚約者を溺愛する

第5話 久しぶりのキス

信一郎さんから連絡が来たのは、芹香と会って二日後の事だった。

【水族館のチケット頂きました。如何ですか?】

その言葉に、また信一郎さんの会社が関係しているのだろうと思った。

そんな風に思う自分も、もうもどかしい。

いっそ、自分が変わってしまえばいいのにと思った。


返事は【楽しみにしています。】と返信した。

会う予定は、週末の日曜日。

本当はデート用の服が欲しいけれど、そんなお金はもうない。

水族館という事もあるから、いつものカジュアルな格好にした。


「行って来ます。」

日曜日に家を出る時に、お母さんが立ち止まった。

「ここんところ、毎週日曜日は出かけているわね。」

「うん。用事があるから。」

「そう言って、デートなんでしょ。」

お母さんはニコニコしている。

「それにしては今日は、カジュアルね。」

「いつもいつもお洒落なんて、してられないよ。」

お母さんは、私に笑って見せた。


「楽しんできなさい。」

「うん。」
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