社長は身代わり婚約者を溺愛する
「それじゃあ、風邪引いちゃうね。」

信一郎さんは自分が羽織っていたシャツを、私にかけてくれた。

「いいよ、信一郎さん。」

「いいや、羽織っていて。芹香のそんな姿、他の人に見せたくないからね。」

かぁーっと、又顔が赤くなった。

信一郎さんといると、照れる事ばっかり。


『では、イルカのショーは終わりです。お越し下さり、ありがとうございます!』

イルカが頭を下げているのを見て、一緒に拍手をした。

その時、信一郎さんの香りが、シャツからフワッと漂ってきた。

「いい匂い。」

「ああ、香水の匂いする?」

「うん。」

好きな人の香りに包まれるって、何となく幸せを感じる。

「気に入ったのなら、今度持ってくるよ。」

「いいの?」

「ああ、お揃いの香りを楽しもう。」

私は、信一郎さんの目を見つめた。

「うん。」

私、信一郎さんと一緒にいられて、幸せだ。

その時だった。
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