社長は身代わり婚約者を溺愛する
大きな屋敷に辿り着いて、門を叩く。

『はい。どちら様でしょうか。』

「森井礼奈と申します。芹香さん、いらっしゃいますか。」

しばらくして、インターホンでお入り下さいと言われた。


玄関を開けると、そこには芹香が私を待っていた。

「礼奈。久しぶり。」

「うん。」

手を軽く上げ、芹香の側に行く。

「今日はどんな用?」

「あの……お金、貸して欲しいんだ。」

毎回この言葉を言うのが、恥ずかしい。

「何に使うの?」

「工場の糸の仕入れ代。今週まとまった発注があって。糸仕入れないと、納品できないんだ。」

「いくら?」

私は請求書を芹香に渡した。

「205,800円。分かった。用意させるわ。」

「いつもごめん。」

芹香は執事の人に、請求書を渡し、代わりに借用書を出した。

私はそれにサインをするだけ。
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