社長は身代わり婚約者を溺愛する
「礼奈?」

名前を呼ばれて振り返ると、高校の時の同級生がいた。

やばい。ここで顔を見せたら、信一郎さんに芹香じゃないってバレる。

私はわざと正面を見た。


「えっ?何?礼奈がいたの?」

「うん……と、思ったけれど、人違いだったみたい。」

友達はそう言って、行ってしまった。

よかった。

私が礼奈だって、バレなくて。


「芹香?」

ハッとして、信一郎さんの方を見た。

「さっきの人達、芹香の友達?」

「あっ、ううん。人違いみたい。」

私は立ち上がると、信一郎さんと手を繋いだ。

「行こう、信一郎さん。」

「ああ。」

私はこの温もりを離さない為にも、芹香になり切って見せる。

私はぎゅっと、信一郎さんの手を固く握った。

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