社長は身代わり婚約者を溺愛する
「うん。」

信一郎さんがワインを飲む姿は、セクシーだと思った。

流石は、大人だと思った。

「私も、ワイン一杯貰おうかな。」

「ああ、いいと思うよ。これはいいワインだしね。」

信一郎さんは、グラスをもう一つ貰うと、ワインを注いでくれた。


「頂きます。」

ワインを一口飲むと、濃厚な味がした。

しかも渋い?えっ?これって、お酒なの?

「ははは。カシスオレンジみたいに、甘くはないね。」

「そうですね。これ以上、飲めるかな。」

「無理しないでいいよ。おいおい、飲めるようになるから。」

信一郎さんの言葉がよそよそしくて、ちょっとショックだった。

私、信一郎さんの為に、ワイン飲めるようになりたいのに。


「今日はどうだった?」

「とても楽しかったです。水族館も楽しかったですし、ここの料理も美味しいですし。」

信一郎さんは、うんうんと頷いてくれた。

「よかった。芹香が楽しいのが、一番だからね。」

「うん。」

私はいつの間にか、芹香と呼ばれる事に、抵抗がなくなっていた。

まるで自分が、芹香のように思っていたんだ。
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