社長は身代わり婚約者を溺愛する
「今日、家まで送らせてくれないかな。」

でも、一瞬で現実に引き戻された。


自分の家に連れて行くなんて、絶対ダメだし。

芹香の家まで行ったって、怪しまれるだけだ。


「いえ、近くまでで大丈夫です。」

私は酔う為に、ワインを口にした。

「お父さんに、挨拶したいんだ。」

ワインを飲む手が、止まった。

「父は……忙しい人ですし。」

「そんなに時間は取らせないよ。沢井社長が忙しいのは、俺も知っているし。」


そんな事言われても、父親に会わせるなんて、余計にできない。

「又、今度にしましょう。」

「今度か……我慢できるかな。」

「えっ?」

私はニヤッと笑う信一郎さんを見た。

「俺達そろそろ、次のステップに進んでもいいんじゃないかな。」

「次のステップって……」

すると信一郎さんが、私の手を握った。

「一緒に夜を過ごすとか。」

私はかぁーっと、赤くなった。

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