社長は身代わり婚約者を溺愛する
そういう事は、別に初めてじゃない。

昔、彼氏がいた時に、一人暮らしの部屋に泊まりに行った事もあるし。

でも、相手が信一郎さんとなると、ちょっと違う。


「俺の事、まだそういう風に見れない?」

「いえ、とても……嬉しいです。」

気持ちが通じ合っているなら、身体を重ねたいと思うのは、普通の事。

信一郎さんだって、普通の人なんだから、そういう事考えるのは当たり前じゃない。


「でも、お父さんに娘さんとお付き合いさせて頂いてますって言ってから、君を抱きたかったな。」

「そんな!いいんです。父は、そういうところ、甘いですから。」

お父さんとは、恋愛の話はあまりした事ないけれど、特別厳しい事言われた事ないし。

元彼の時だって、泊まりに行っても、何も言われなかった。

「驚いたな。てっきり箱入り娘だと思っていたのに。」

ドキッとなった。

そうだ。私は、信一郎さんの前では、お淑やかなお嬢様だった。

「……父は、恋愛はしなさいって言う派なんで。結婚までに誰とも付き合うななんて、言われた事ないんです。」

「そっか。今時のお父さんなんだね。」

「はい。」

ははは。芹香のお父さんは、どうなんだろう。

お見合いさせるぐらいだし、芹香が好きな人を隠しているぐらいだから、本当は厳しいのかな。

「じゃあ、俺は芹香を大切にしないとね。」

「はい。大切にしてください。」
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