社長は身代わり婚約者を溺愛する
そして、二人でふふふと笑った。

「じゃあ、行こうか。」

「はい。」

立ち上がろうとすると、足元がふらついた。

「大丈夫か?芹香。」

「う、うん。」

ワイン飲み過ぎたかな。

真っすぐに歩けない。

「俺に捕まって。」

信一郎さんの腕にしがみ付いて、私は何とかお店の外に出た。


「すみません。こんなになるはずじゃなかったのに。」

「大丈夫だよ、俺がいるから。」

信一郎さんの顔が、ゆらりと揺れる。

「参ったな。一人で帰せないよ。」

信一郎さんはタクシーを呼ぶと、私と一緒に乗った。

「桜町まで。」

「はい。」

酔っている最中の中、聞こえてきた桜町は、芹香の家がある方向だ。

しっかりしないと、大変な事になる。

「信一郎さん、私大丈夫なので、途中で降ろして下さい。」

「ダメ。他の男に襲われたら、どうするの。」
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