社長は身代わり婚約者を溺愛する

第7話 運命の人

そして私は芹香に抱えられながら、彼女の家に連れて行かれた。

「はい、お水。」

水が入ったグラスを手渡され、私は受け取ると、ごくごくと飲み始めた。

飲み終わると、グラスを持つ手が震えている。


「さあ、話してちょうだい。」

「芹香……」

「怒らないから。さあ。」

”怒らないから”彼女の言葉には、信ぴょう性がある。

今まで芹香が、私に怒った事あった?

そう、ない。

大丈夫。今回も、芹香は許してくれる。

そう、彼女を信じる。


「相手は、芹香がお見合いを断って欲しいって言った、黒崎信一郎さんなの。」

「やっぱり。」

芹香は、はぁーっとため息をついた。

「それで?どうして、その黒崎さんと一緒にいる訳?」

「……お見合いを断れなくて。」

「断れなかった⁉」

私の身体がビクつく。

「ちょっとちょっと。じゃあ、相手は私との話が進んでるって思っているの?」
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