社長は身代わり婚約者を溺愛する
「えっ……」

私がお嬢様っぽく見える?

こんな貧乏な工場で働いている私が?

「服は私が貸すから。ねえ、お願いだよ。私の人生がかかっているんだから。」

私は、さっき借りたばかりのお金を、握りしめた。


これからも、工場の事で芹香にお金を借りるかもしれない。

その時に、この話を断った事で、芹香が渋ったら?


「分かった。そこまでお願いされたら、やるよ。」

「よかった。有難う、礼奈。」

芹香は本当に嬉しそうだった。

「日付は今度の日曜日。時間は15時。東帝ホテルのラウンジでね。」

「東帝ホテル……」

流石はお金持ちのお見合い。

一般庶民が行く場所じゃない。


「行く前に、私の家に寄って。洋服を着替えて、メイクして。車も準備するわ。」

「うん。分かった。」

準備万端。

芹香は私が断ったら、どうしていたのだろう。
< 8 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop