海色の世界を、君のとなりで。

「そっか。さすが星野だね」

「さすがって、お前も全力だっただろ」

「うん、まあ……」


星野の視線がスッと下に落ちる。


「足、怪我したのか」


言われてようやく思い出した。

プレー中は必死で痛みなんて感じなかった。

それに、上手なテーピングのおかげで固定されつつも非常に動きやすかった。


「あ……そうだった」

「忘れてたのかよ」


ふはっと笑った星野は、「大事にしろよ」と瞳を和らげた。


「うん。ありがと」


お礼を言うと、星野は「そういえば」と、突然思いついたようにわたしを見た。


「負けたってことは、もうすぐ世代交代するんだよな」

「女子は栞ちゃんが新キャプテンなんです」


星野は、横から声を上げた可奈を一瞥して、またその海色の瞳をわたしに戻す。


「お前にできんの?」

「任されたからには、中途半端はもうやめる。みんなのために、全力でやる」


星野は「ふうん」と興味なさげに呟いて、ゆるりと口の端を上げた。

いつもの無関心な態度のように見えたけれど、今は少し違う。

なんだかよく分からないけれど、星野にしては明るい表情をしていた。
< 117 / 323 >

この作品をシェア

pagetop