海色の世界を、君のとなりで。
「そっか。さすが星野だね」
「さすがって、お前も全力だっただろ」
「うん、まあ……」
星野の視線がスッと下に落ちる。
「足、怪我したのか」
言われてようやく思い出した。
プレー中は必死で痛みなんて感じなかった。
それに、上手なテーピングのおかげで固定されつつも非常に動きやすかった。
「あ……そうだった」
「忘れてたのかよ」
ふはっと笑った星野は、「大事にしろよ」と瞳を和らげた。
「うん。ありがと」
お礼を言うと、星野は「そういえば」と、突然思いついたようにわたしを見た。
「負けたってことは、もうすぐ世代交代するんだよな」
「女子は栞ちゃんが新キャプテンなんです」
星野は、横から声を上げた可奈を一瞥して、またその海色の瞳をわたしに戻す。
「お前にできんの?」
「任されたからには、中途半端はもうやめる。みんなのために、全力でやる」
星野は「ふうん」と興味なさげに呟いて、ゆるりと口の端を上げた。
いつもの無関心な態度のように見えたけれど、今は少し違う。
なんだかよく分からないけれど、星野にしては明るい表情をしていた。