海色の世界を、君のとなりで。
可奈の恋愛話に全く興味がないと言えば嘘になるけれど、無理して聞き出そうとするくらい気になるわけでもなかったので、そのあたりはぼかして曖昧にしていた。
可奈もわたしのことについて何も訊いてくることはなかったので、お互いにあまり干渉しないようにしていたのだ。
けれどわたしが聞かされていないだけで、こんなにも可愛い可奈には当然彼氏がいるだろうから、年に一度のお祭りにわたしなんかと来ていてよかったのか、さすがに心配になった。
「どうして? もしかして私とは嫌だった?」
「いや、そんなことはないんだけど。可奈は彼氏がいるだろうし、その人とじゃなくてよかったのかな、って……」
そう言った瞬間、ふっと可奈の顔に影がかかったように見えた。
けれどそれはほんの一瞬で、可奈は口角を上げて首を横に振る。
「ううん、いいの。栞ちゃんがいいの!」
「ほんとに? ……いや、嬉しいんだけどさ。こんなふうにはっきり言われるとさすがに照れる」