海色の世界を、君のとなりで。
「苦しい……」
どこにいても、何をしていても苦しい。
幸せそうに見える人はきっと、幸せを見つけるのが上手なんだと思う。
今日の星座占いが一位だったとか、雨上がりに虹が出ていたとか、通学路に小さな花が咲いていたとか。
ごくありふれた日常の中で幸福を得ることができる人は、長い人生の中でも両手で抱えきれないほどの幸せを感じながら生きていくのだろう。
暗い部屋で静かに目を瞑る。
瞼の裏に、さっき見た花火の情景が浮かんだ。
花火が上がった瞬間、たしかに心が動いたはずなのに、もうその感動は薄れてしまって思い出すことができなくなってしまっている。
楽しい記憶がつらい感情で塗り替えられてしまったことにまた哀しみを感じるくらいなら、初めから楽しい思いなんてしないほうがいい。
どんどん暗い気持ちに陥っていくのを打ち消すように、部屋のあかりをつけた。
「まぶし……」