海色の世界を、君のとなりで。
「お前、それでいいのかよ香山」
「えっ?」
黙っていた星野が口を開いて、香山くんを鋭い眼差しで見つめる。
香山くんは驚いた顔をして一瞬固まったけれど、すぐに何か思いついたようで「いや……えっと…」と言葉を濁した。
「どこか行きたいところあるの?香山くん」
訊ねると、彼は左右に瞳を揺らしたあと、
「清水寺に、行きたいです……」
とか細い声で告げた。
「えっとじゃあ、わたしたちの班は清水寺に行くってことでいい?あとは周辺のお店を巡って時間潰せばいいだろうし。とりあえずメインは清水寺で」
まとめると、まず香山くんが「それがいいです!」と賛成し、それから可奈も「いいね」と頷く。
星野は黙ったままだったけれど、小さく頷いて賛成を示した。
「清水寺かあ……紅葉、綺麗だろうなあ」
「だね。超楽しみ」
はやくも修学旅行に思いを馳せる可奈にコクコク頷いて、修学旅行のしおりをめくる。
この修学旅行がわたしの運命を大きく変えることになるなんて、このときのわたしには思いもよらないことだった。