海色の世界を、君のとなりで。
 星野がアリーナから出ていく瞬間、こちらに視線を向けた。


 一瞬、目が合う。
 周りの喧騒が消えて、何も聞こえなくなった。

 まるで時が止まったようなその数秒の後、どちらからともなく視線を逸らす。

 となりでは可奈が「星野くん、今絶対こっち見たよね!?」と騒いでいる。


 ああ、何もかもが憂鬱だ。
 きっと、いや、絶対に勘付かれている。

 力を抜いてプレーしたことを、絶対に気付かれてしまっている。


 なんとなくそんな気がして、沈む気持ちを堪えるように、深く息を吐き出した。
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