海色の世界を、君のとなりで。

岡本先生はお茶を啜った。


「……でも人間なんだから、仕方がないじゃない?抱えるものは一人ひとり違う。それぞれが抱く思いだって違う。そうやって悩んで、葛藤して、ドキドキして、涙を流して。無責任なことは言ってあげられないけれど、いつかきっと、栞ちゃんの苦しみを分かち合える人が現れると思う。私はそう信じてる」


分厚いノートをパタン、と閉じた先生は、「だからそんなに深刻に考えないで」と目を細めた。


「学生の時に焦るのは分かる。高校生なんて特に恋愛の話は多いから、どうしても周りと違う、って思っちゃうと不安になるよね」

「……はい」

「でもね栞ちゃん。未来はどうなっているか、そんなことは誰にも分からない。この世界に絶対はないし、だからこそ"奇跡"なんて言葉が生まれてる。この世界は、すべて奇跡の積み重ねなの。だから奇跡的な出会いをする可能性だって十分にあるのよ。青春を謳歌するあなたたち学生は余計にね」
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