海色の世界を、君のとなりで。
雪が溶け、それでもまだ寒さは残る三月初旬。
雨、降りそうだな。
どんよりとした雲に覆われている空を見上げながら、重い足を前に進める。
春に近付いているとはいえ、まだ完全に寒さが和らぐわけではない。
かといってマフラーをするのもなんだか気が引けて、首元には何も巻かない状態で冷たい風を感じながら歩を進める。
「……っ」
「あ、すんません!」
ドンッ、という衝撃が肩に走って、思わず顔を歪める。
ぶつかってきたのはよく知らない男子だった。
比較的に小柄な体格からして後輩なのだろうと思う。
何度かペコペコとお辞儀をして去っていく彼に悪気はまったくなさそうだったので、特に何も言うことなく会釈だけしておいた。