海色の世界を、君のとなりで。

「───…迎えにきた」



 それは、いつかの日の約束。

 曖昧で、あやふやで、星野にとっては迷惑極まりないわたしのわがままだったはずなのに。

 ずるいよ。すべて叶えてしまうのだから。


どんなに自分の気持ちを否定して、抑え込もうとしても、やっぱり無理だ。できっこない。



(惹き寄せる力が───…強すぎる)


 どんなに抗おうとしても、それ以上の力で惹かれてしまう。遠ざかろうとすればするほど、近づきたいと心が叫ぶ。離れたいのに、離れられない。
 たとえ気持ちを伝えることはなくても、確実に想いは生まれている。日々を一緒に過ごすうちに、どんどん膨らんで大きくなって、自分でもどうしようもないくらいに確かなものになってしまった。

 雨の中、わたしのもとへ来てくれた。こうして、傘を差してくれた。約束を果たしてくれた。

 雨に打たれても構わず。こんなにも優しい表情で────。
< 240 / 323 >

この作品をシェア

pagetop